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民話5 海老と大鳥

海老と大鳥(浜田市三隅町古市場)

収録・再話 酒井 董美(ただよし)(山陰民俗学会会長)

→音声を聞く

昔、あるところに一羽ばたきに三千里、二羽ばたきで六千里も飛ぶ、大きな鳥がおりましたそうな。そして、あるときその鳥が、
−わしより大けな鳥はおるまい−
と思って、ある朝、早く西の果てを見ようと思って、羽ばたきはじめました。
 ところが、一日経って夕暮れになりまして、
−今夜はどうでも泊まらんにゃあならんが、何かええ宿がないやら−
と捜していましたところが、海の中に大きな二本の柱が立っておりました。
−この柱に止まって休んでやろう−
 そう思った鳥は、その柱の上へ止まろうと、降りましたそうな。そうしたところが、
「きさま、わしの鼻ひげへ止まったが、無礼じゃ」と声がしました。大きな鳥は、「これはさっぱりしもうた。わしより大きいものはおらんと思うとりましたが、これが鼻ひげちゅやあ、こりゃ負けた」と言いましたそうな。
 その鼻ひげの主は海老(えび)だったそうな。
 それから、今度はその海老がまた、
−わしより大けなものはおるまい−
と思って、西の果てを捜して泳ぎだしました。ずんずんずんずん泳いでおりましたところが、また日が暮れて晩になりましたから、宿がないかと捜しておりましたところが、大きな岩の穴がありました。海老はその岩の穴に入って、
−今夜はここでやすもう−
 そう思って休んでいましたら、だれかが、
「こそばいい」と言います。よく聞くと、
「わしの鼻の穴へ入ったが、こそばいい」
「何を言うか。わしよりいかい(大きい)ものはおらんと思うておるのに」と海老が言いましたところが、その声の主は、
「出んようなら、こづき(つつき)出いちゃる」と言いました。
 それは赤エイの鼻の中だったのです。
 海老は赤エイとは知らずに、赤エイの鼻の穴の中に入っていたのです。
 それで赤エイが「クスン」と咳をしました。
 そうしたら、海老は向こうの岩にひどくぶつかってしまって腰が折れてしまいました。
 それ以来、海老というものは腰が曲がっているのです。

解説

 語り手は明治26年(1894)生まれの男性であり、この話は昭和35年(1960)3月6日にうかがった。
 これは関敬吾博士の『日本昔話大成』で分類を調べてみると、「笑話」の中の「巧智譚、業較べ」との中に「大鳥と蝦」として登録されている話型であり、各地で伝承されているようである。次々と連鎖反応的に登場人物(?)が交代して物語が展開するが、なかなかスケールの大きな話でおもしろい。
 しかしながら、わたし自身は同類の話をどうしたわけか、これまでにまだ他の方から聞く機会を得ていないのである。
 なお、語りの最中、意味不明の言葉に聞き手が質問しているところがあるが、これは聞き方としてはよくないやりかたである。そのあたりのルールも知らず、収録を開始したばかりのころの初歩的ミスとしてご理解いただきたい。


 
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