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わらべ歌8 ねーん ねーん ねんねんや

ねーん ねーん ねんねんや(子守り歌・奥出雲町大呂)
              収録・再話 口承文芸研究者 酒井 董美

→音声を聞く


ねーん ねーん ねんねんやー ねーん ねーん ねんねんやー
ねんねこ さかぼこ よい子だな ねんねこ さかぼこ よい子だな
よい子だ よい子だ よい子だな よい子だ よい子だ よい子だな
よい子だ よい子だ ごーごしぇやー よい子だ よい子だ ごーごしぇやー
よい子だ よい子だ ごーごするー よい子だ よい子だ ごーごするー
よい子がごーごーしたまに よい子がごーごーしたまに
あんもこついて冷まいて あんもこついて冷まいて
べんべの子に負わしぇる べんべの子に負わしぇる
よい子だ よい子だ ごーごした よい子だ よい子だ ごーごした
   
                歌い手 男性・明治29年(1896)生


解説
 わたしがこの歌をうかがったのは昭和43年(1968)のことである。横田町立鳥上中学校に勤めていたわたしは、クラブ活動で生徒たちと校下の古老を訪ねて、言語伝承の聞き書きを続けていた。そのような活動に理解を示され、昔話やわらべ歌を教えてくださる一方、ご自身も多くの民具を収集されており、せめてその目録でも作りたいと言っておられたので、中学校で出していたガリ版刷りの機関誌『伝承鳥上』で、クラブ員の生徒が鉄筆を握って何日もかかり、それを実現して差し上げたら、非常に喜んでくださったことを思い出す。
 さて、これはかなり長い子守歌である。そしてその詞章から赤ん坊を眠らせるために用いることが理解できる。赤ん坊がむずがり出すと、その子に手を取られて他の仕事をができない。したがって、静かに眠ってくれることを大人たちは願っている。まさに「寝る子は育つ」の諺の通り、そのような大人の願いがこめられた内容となっている。
 詞章で「ごーごしぇや」は「眠りなさいよ」、「あんもこ」は「あん餅」、「べんべの子」は「牛の子」を意味する出雲地方の方言である。したがって、「良い子をして寝たならば、そのご褒美に牛の子に負わせてあげて、おいしいあん餅を作っておいてあげる」という意味になる。
 近くの木次町でも、似たような次の歌があった。

ねんねせや ねんねせや 寝たら あんも搗いて 冷まして
ベンベンコ(牛の子)に負わせて
山越え 里越え 里の土産に 何もろた でんでん太鼓に 笙の笛
たたいて聞かしょか テンテンテン 吹いて聞かしょか ピ-コロロ
ねんねせや ねんねせや
-女性・大正14年(1925)生-

 詞章は短いが、発想はまったく同じなのである。


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