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国宝 荒神谷遺跡出土銅剣の修理について

開催日
2008年08月03日

去る平成20年4月15日、資料調査中に当館において国宝 荒神谷遺跡出土銅剣のうちの1本に亀裂が生じるというき損事故が発生しました。この度、この銅剣の修理作業が完了いたしましたので、下記のとおりご報告いたします。
今後は、このような事故が発生しないように資料の取り扱いに細心の注意を払い、調査活動や活用に万全を期してまいりたいと考えております。
貴重な文化財を永く保存するとともに、広く活用して参りたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

1 修理の対象となる資料の名称及び数量
国宝 荒神谷遺跡出土品 銅剣358口 のうちの 1口(B64)

2 これまでのおもな経過
・4月15日  経年変化を観察する現況調査中、刃部に亀裂が生じ、少量の粉状片が生じるき損事故がおこる。
・4月18日  き損した銅剣を報道関係に公開。
・5月14日  文化庁美術学芸課文化財調査官がき損した銅剣を調査。夏をメドに修理を行うように指導を受ける。
・6月末まで 文化庁の指導を得て、修理の方針や仕様、用いる材料等を検討、決定。
・7月29日~31日 古代出雲歴史博物館において修理作業実施。
・7月31日  文化庁美術学芸課文化財調査官が修理を指導。修理状況を確認し修理作業が完了する。
・8月 1日  修理後の銅剣を報道関係に公開。

3 今回の修理方針と修理内容
【修理前の状況=応急処置後の状況】
・セメダイン3000を亀裂部に点的に注入(展示面から)。
・表層剥離による粉状の小片を接着。亀裂部分にだけ樹脂(NAD-10)塗布し防錆(展示面から)。
…展示面に樹脂の部分的なツヤが発生し、亀裂部分の強度不足による脱落が懸念される。

【修理方針】
一、亀裂部分を強化する。
二、仕上がりについて、部分的な樹脂のツヤを抑える。
三、被膜をつくり、防錆を高めるため樹脂塗布を行う。
四、使用する強化樹脂は前回の保存修理で用いた樹脂を使用する。
(※前回の保存修理とは、昭和61~平成6年度まで行われた文化庁による保存修理のこと。)
…以上の4点を基本方針とし、将来の再修復を見据え、かつ、全点展示活用の理念から、処置後展示へ戻すことを前提に、材料や方法を選択した。なお修理場所は移動時の危険性を考慮し、古代出雲歴史博物館内で行うこととした。

【実施した修理の内容】
一、裏面のクラック部分に和紙による裏打ちをし、亀裂部分を強化した。
二、4月の応急処置時に展示面にできた樹脂たまりによるツヤを、溶剤を用いて除去した。
三、四、展示面・裏面とも、樹脂(NAD-10 4倍希釈ナフサ懸濁液=前回の保存修理で用いたもの)を塗布し、被膜をつくり、防錆を高めた。

【実施】
事業主体:島根県立古代出雲歴史博物館 / 受託者:財団法人元興寺文化財研究所
「荒神谷遺跡出土銅剣の修理業務委託」契約を締結し実施。

4 今後の展示・公開について
今後、1ヶ月間の観察期間を設け、考古収蔵庫内にて保管し、状態の確認を行う。この間に異常が認められなければ、9月16日(火)休館日に展示ケースに搬入し、翌17日(水)より当館テーマ別展示室「青銅器と金色の大刀」において常設公開する見込み。

 

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