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イベント

「出雲藍板締め」は、国の登録有形民俗文化財になりました。

開催日
2010年01月19日

染め布(竹に虎)
染め布(竹に虎)
版木と染め布
版木と染め布

国の文化審議会は、2010年1月15日(金)に、県内所在の下記文化財を登録有形民俗文化財へ登録するよう、文部科学大臣に答申しました。

1)名称 出雲の藍板締め染め用具及び製品
2)所有者 島根県(所蔵機関:島根県立古代出雲歴史博物館)
3)員数 2,617点
 [内訳:版木(はんぎ)2,557点、締め具(しめぐ)56点、製品 4点]

答申文化財の概要
江戸時代の出雲地方は、木綿栽培と藍染めが盛んな地域であった。登録物件は出雲市内で江戸時代末から明治時代初めにかけて行われていた藍板締め染めに用いられた用具とその製品である。染めを行っていた板倉家が廃業した後、長らく同家に保管されていたもので、平成11年に島根県に一括して寄贈された。
登録物件は、文様を掘り込んだ版木とこの版木の間に布を挟み何枚も重ねて締めあげるのに用いた締め具及びその製品である染め布からなる。藍板締め染めは現在は伝承が途絶え、「幻の染色」とも言われており、その実態を知る上で貴重な資料である。

公開展示
藍板締め染めの版木と染め布の一部は、古代出雲歴史博物館の常設展示室にて展示しています。なお、毎月展示替えを行っており、月により異なる文様をご覧いただけます。

板締め染めの歴史
板締め染めは文様を彫った複数の木の板の間に、布を挟んで強く締めつけて染料に浸ける染色技法で、その歴史は古く、正倉院には多数の裂(きれ)が残されている。「幻の染色」とも言われ、実際の染色方法については、未解明な部分が多く、中世には姿を消してしまったといわれる。
江戸時代になり木綿が庶民の間に普及するようになると、板締め染めが再び見られるようになる。当時は絣染めや小紋染めなどと並んで一般的に見られた染め物であったが、実際には、大正時代まで営まれていた京都の紅板締めと、出雲の藍板締めが確認されているのみであり、全国的に貴重な資料となっている。また、藍染の板締め用具としては全国で唯一確認されているものである。

板倉家における藍板締め染め
島根県出雲市大津町で代々村役人を勤めていた板倉家(現世帯主 板倉吉彦氏)は、商業も手広く営んでいた旧家である。同家に保管されていた文書によれば、文化4年(1807)に染物を始め、板締め染めを開始したのは文政12年(1829)のことである。その後順調に販売反数を伸ばし、九州への売り込みも図っている。
こうした板締め染めも、幕末にいたっては売上が減少し、明治3年(1870)に板倉家は紺屋を廃業した。板締め染めに使用された用具と染め布は、そのまま近年まで同家に保管されてきた。

資料の寄贈と技法復元の取り組み
板倉家に保管されていた藍板締め染め用具を含む関連資料は一括して平成11年に島根県に寄贈された。平成16年~19年に島根県古代文化センターで「出雲藍板締めの復元研究」をおこない、平成20年に古代出雲歴史博物館企画展「よみがえる幻の染色-出雲藍板締めの世界とその系譜-」を開催した。

染色方法の復元
技術伝承が途絶えているため、確実な方法は不明であるが、用具調査の結果、片面に文様が彫られている版木は40枚、両面に文様が彫られている版木は20枚程度積み上げて、その間に1反の木綿布を夾んで染めたとみられる。積み上げた版木の上下には版木が圧力でつぶれないように厚板の置いて、それを締め具によって圧力をかけ、藍甕に浸染したとみられる。

用具及び製品の概要
・版木(2,557点)
材質は、ほとんどが姫小松。サイズはおおよそ縦46cm、横33cmで、厚さは6mm程度である。彫られた文様は松、竹、梅などの吉祥文を中心に幾何文や器物など、176種類に及ぶ。

・締め具(56点)
重ねて積み上げた版木を固定・締め付けるための用具。締め具は6タイプあるが、どのような組み合わせで使用されたのかは技術伝承が途絶えているため不明である。

・製品(4点)
現在、確認されている製品(染め布)は20点あるが、そのうち4点を古代出雲歴史博物館が所蔵する。所蔵する染め布のうち、残された版木の文様と一致するものは、2点のみである。いずれの染め布も端布の状態で、細い糸で粗く織られた薄い木綿地は、ガーゼのような風合いである。板締め染めの特色である布の両面に文様が染め出されている。


【参考文献】
・『よみがえる幻の染色 出雲藍板締めの世界とその系譜』(島根県立古代出雲歴史博物館企画展図録 平成20年)

・『出雲藍板締めの復元研究』(島根県古代文化センター研究報告書 平成20年)

販売状況は、こちらから確認できます。

関連リンク
常設展示室に「幻の染色-出雲藍板締め-」を設置します(2009年4月22日~)
島根県報道発表資料(2010年1月15日)

 

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