HOME > 民謡11 キヨが機織りゃキンニャモニャ(座敷歌)

民謡11 キヨが機織りゃキンニャモニャ(座敷歌)

キヨが機織りゃキンニャモニャ(座敷歌・隠岐郡海士町)

収録・再話 酒井 董美(口承文芸研究者)

→音声を聞く

キヨが機織りゃ キンニャモニャ あぜ竹へ竹 殿に来いとの キンニャモニャ
まねき竹 クラゲ チャカポン モテコイヨ

届け届けよ キンニャモニャ 末まで届け 末は鶴亀 キンニャモニャ
五葉の松 クラゲ チャカポン モテコイヨ


歌い手 女性・大正3年(1914)生


解説
 隠岐地方を代表する座敷歌の一つであり、海士町の歌とされている。これは最近では、フォークダンスで用いられることもあるが、元々は宴席の余興でうたいながら踊ることが多い。
 踊りはシャモジを両手で持ち、歌に合わせてシャモジをひらひらとひらめかせながら、ときおり頭上でカチンと合わせるもので、これはなかなかきらびやかで派手な踊りがついており、現地ではだれでも踊れるようである。
 わたしも昭和48年(1973)から5年間、海士町に住んでいたが、宴会に出席したおり、地元の人々が、いとも軽やかにこの歌をうたいながら、踊るのを見たものであった。
 ところで、ここに挙げた最初のものが「キンニャモニャ」独自の詞章で、囃し言葉を除けば、近世民謡調の七七七五調であることが分かる。

キヨが機織りゃ……七
あぜ竹へ竹…………七
殿に来いとの………七
まねき竹……………五

 そして囃し言葉の「キンニャモニャ」とか、「クラゲ、チャカポン、モテコイヨ」などが、ついている。昭和44年(1969)に日本放送出版協会から発行された『日本民謡大観(中国編)』によれば、西郷町(現隠岐の島町)でキンニャモニャを収録している。囃し言葉は同じだが、詞章は「うれし目出度の若松様よ、枝も栄えて葉も茂る」と一般的である。このときは本場、海士町での収録はなかったのであろう。次に同書の解説を引用しておく。

「島後の港町である周吉郡西郷町には「キンニャモニャ」と呼ぶ奇妙な名の唄が伝えられている。曲名の意味は不明だが、同系の唄が遠隔の地に点々と残っている。熊本市の花柳界での騒ぎ唄「キンニャモニャ」、長野県上伊那郡伊那里村の酒席の騒ぎ唄「キンニョンニョンニョ節」などがそれで、愛媛県宇摩郡新宮村では田の草取りに謡っており、これらの唄は曲節も囃しことばも大同小異である。また新潟県佐渡にも「キンニョウモニョ節」という同巧の唄が、これは歌詞のみだが記録されている。」

ここから海士町の歌も、これらの歌と無縁ではないようである。

ページトップ