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わらべ歌9 おじゃみおふたおみえ(お手玉歌)

おじゃみおふたおみえ(お手玉歌・松江市美保関町)

収録・再話 酒井 董美(口承文芸研究者)

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おじゃみ おふた おふた おみえ おみえ およお およお おいつ おいつ
おったい おったい 貸してくれ すっとんきい おじゃみ じゃくとんきい おおふた桜 桜
おおみ桜 桜 おおよ桜 桜 おおいつ桜 桜 おおも桜 桜 おったい おったい
貸しとくれ とんき
歌い手 女性・明治34年(1904)生


解説
お手玉歌として知られているのは、この「おじゃみ」系統と、今ひとつ「おさら」系統がある。これまで山陰両県を回ってみて気づくのは、不思議なことにどういうわけかこの「おじゃみ」の歌が鳥取県では、まだみつからないことである。鳥取県内のわらべ歌を集大成した先行文献である稲村謙一編著『鳥取のわらべ唄』(昭和59年〈1984〉・鳥取市社会教育事業団発行)でも見ることができない。
 けれども、島根県では松江市、出雲市、雲南市、奥出雲町、飯南町あたりで同類を聞くことができた。
 天保初年(1830)ごろ成った高野仙果著『熱田手毬歌』には、同類が次のように出ている。

お一と お二た お三い お四を お五つ お六う なつてくりヨ トンキリ お一と桜 トンキリ
お二た桜 トンキリ お三い桜 トンキリ お四を桜 トンキリ お五つ桜 トンキリ
お六う桜 トンキリ 一寄桜 トンキリ お七返し トンキリ お載せ トンキリ おたゝき おかわ
かァわ トンキリ お三つお出し 出たよくばァらり トンキリ お匾蚤(ばった)逃がし
トンキリ お馬の乗りかへ お駕篭乗りかへ トンキリ お一とお抜 トンキリ お二たお抜 トンキリ
お三いお抜 トンキリ お四をお抜 トンキリ お五つお抜 トンキリ お六うお抜 トンキリ
ひと寄お抜 トンキリ お一とおつめ トンキリ お二たおつめ トンキリ お三いおつめ トンキリ
お四をおつめ トンキリ お五つおつめ トンキリ お六うおつめ トンキリ ひと寄おつめ トンキリ
お別れ トンキリ

 この歌は七つのお手玉で遊ぶものである。そして、これが松江市美保関町で採録した歌につながっていることは、歌の内容から見て一目瞭然であり、改めて説明するまでもないであろう。
平成10年10月15日、全国僻地教育研究大会が島根県奥出雲町の高田小学校であった。わたしも当時勤めていた島根大学の留学生を連れて参加したが、このとき一年生だった久井真理子さんがおばあさんから教わったお手玉歌を全国からの見学者に披露しながら、研究発表をしていた。まさにそれはこの類の歌だった。江戸時代のお手玉歌が、こうしてひめやかにうたい継がれている実体を目の前にして、わらべ歌の命の長さを知り、わたしは感慨無量なものを覚えたのであった。

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