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五 結婚でめでたい!

 出雲地方では、嫁入り支度や孫拵えなどとして、布団皮、夜着、風呂敷、子負い帯などを藍で染め、娘の幸福や孫の健やかな成長を祈って嫁の実家から婚家へと贈られました。ここでは荒布屋コレクションから筒描藍染製品を中心に紹介します。
 荒布屋は松江市北堀町にあり、江戸時代後期には料亭、明治時代からは鮮魚商を営んできた家で、そのコレクションは、現当主 石原幸雄御夫婦が40年かけて蒐集した藍染製品からなります。
 筒描藍染は、筒袋に糊を入れ、筆を使うように糊を絞り出しながら文様を描き、文様を白抜きに藍染する技法で、柔らかい線が出ることに特徴があります。


結婚は出雲大社にて

結婚ハ出雲大社ニテ
昭和15-18年(1940-1943)
出雲大社では江戸時代末から神式の結婚式がなされたとされますが、一般には明治33年(1900)の皇太子(後の大正天皇)の結婚式を契機に神前結婚は広がっていきました。この作品は、縁結びの地、出雲大社での結婚式をすすめる地元旅館発行のパンフレットです。







婚礼夫婦掛布団 鶴亀松竹梅丸紋

婚礼夫婦掛布団 鶴亀松竹梅丸紋
明治時代後期-昭和時代前半(20世紀)
 当館(荒布屋コレクション)
嫁入り支度として調えられた婚礼布団。綿入りの状態で残るめずらしいものです。文様は、長寿を象徴する鶴・亀とともに、冬の寒さの中で、常緑を保つ松と竹、春の先駆けとした花開く梅といった吉祥の代表ともいえる松竹梅があしらわれています。娘に幸福あれという親の気持ちが伝わってきます。


風呂敷 雪輪に九枚笹・鶴に宝尽くし

風呂敷 雪輪に九枚笹・鶴に宝尽くし
明治時代後期-昭和時代前半(20世紀)
当館(荒布屋コレクション)
 風呂敷も嫁入り支度として婚家に贈られました。この風呂敷は中央に実家の家紋である九枚笹を女性の象徴として雪輪で囲み、四方に松・軍配(勝利を象徴)、巻物(知識を象徴)、丁子(南国のスパイス、希少なもので吉祥)、打出の小槌、宝珠(望みのものを出す)、鶴、金嚢(富を象徴)など宝尽くし文様があしらわれています。



湯上げ 鶴亀松竹梅

湯上げ 鶴亀松竹梅
明治時代後期-昭和時代前半(20世紀)
当館(荒布屋コレクション)
 湯上げとは風呂上がりに子どもの体をふくもので、孫拵えとして調えらました。上部(子どもの顔を拭く部分)は紅で染められています。紅花は皮膚病や眼病に効果があるとされ、また紅は厄除けともされていました。





胞衣箱

胞衣箱
明治3年(1870)
松江城下町遺跡出土
松江市教育委員会
 外箱の蓋に「明治三庚午年六月八日/亥ノ上刻誕生女子胞衣」とあることから、松江藩10代藩主松平定安の9女鑑子姫の胞衣箱と考えられます。後産を子どもの成長を祈って四つ辻など人通りの多い場所、あるいは逆に人に踏まれない場所に埋めることは、昭和30年代後半頃まで松江でも行われていました。女児故か、羽子板や胡鬼子に用いたムクロジ(無患子・この文字から羽子板が縁起物ともされた)の実も納められていました。

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