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七 平穏無事が一番めでたい!

 当展で紹介してきた展示資料からは、長寿・出世・商売繁盛・豊作などの様々な人々の願いを読み取ることができます。ところで島根半島の各集落では、災害など特別なことが何も生じない時、いわば平穏無事な時に神仏の御蔭を感じるといいます。また、宝永2年(1705)や明和8年(1771)の伊勢神宮への集団参詣現象の状況を記した神異譚・利生譚をを見ますと、「常の状態に復すること」、「平穏無事であること」が神異として強調されています。実は、伊勢神宮への集団参詣現象が「御蔭参り」と呼ばれるようになったのは、宝永度から明和度に至る間なのです。このように見るならば、神仏の最大の御蔭、人々の一番の願いは「平穏無事」と考えることはできないでしょうか。
 四つの海の浪たヽぬ世に生れ逢うは これぞ天事のおかげなるべし(『御蔭耳目』)



文政一三年庚寅年春ヨリ御蔭参り道中の粧(春王 筆)

文政一三年庚寅年春ヨリ御蔭参り道中の粧(春王 筆)
江戸時代(19世紀)
当館
 江戸時代、伊勢神宮への参詣現象は十数回見られましたが、そのうち慶安3年(1650)、宝永2年(1705)、明和8年(1771)、文政13年(1830)のものが大規模で、明和度以後、この集団参詣現象は「御蔭参り」と呼ばれています。文政13年は3月阿波から始まり、5月10日頃から出雲や石見からの参詣者も見られるようになりました。



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