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わらべ歌6 ぼんぼんさんさん

ぼんぼんさんさん(手まり歌・大田市)

収録・再話 口承文芸研究者 酒井 董美

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ぼんぼん さんさん さん 山道
やんやん 破れた 御衣
行ききも もん戻りも
きにかかる か菓子屋さん
 −伝承者 女性・昭和23年生(1948)生
昭和36年(1961)7月26日収録

解説
 
 三瓶山方面の言語伝承を集めに回っていたら、女の子たち数名が遊んでいた。そこでわらべ歌をうたってもらった一つがこれであった。そのころ、わたしはまだ二十六歳で、この方面の知識も浅かった。
 したがって、わたしはこの歌も同音語を重ねたおもしろさを持つ歌としてのみ考えていた。
 ところが、少し時間が経過して見ると、実はこの歌は大人の労作歌を、子供用に改作したものであることが分かった。
 昭和41年(1965)年4月25日のこと、吉賀町柿木村口屋である女性(当時77歳・同町高尻出身)から、木挽き歌として次のように教えていただいた歌は、まさに大田市の子供たちの手まり歌の本歌だったのである。

坊さん山道ゃ 破れた衣
行きし 戻りが
木に掛かる

 柳田国男も『民謡覚書』の「採集の栞」の中で、
ぼさん山路破れたころも
行きし戻りがきにかかる
 こう引用し、「江戸でも古くから有名であったのは、この口合が軽い故であるが、実は(中略)男女をからかった歌で、なまめかしい色々の意味が含まれてゐた。」と解説している。これで見ると柳田は盆踊り歌の一種として、この歌を扱っていた。これらの歌は音節数からは基本的には七七七五スタイルである。

ぼさん山路………七
破れたころも……七
行きし戻りが……七
きにかかる………五

 この形は、近世民謡調と呼ばれ、江戸時代後期に流行し始めたものであり、現在の各地の民謡にも、このスタイルをしたものがかなりある。近いところでは安来節がそれであり、鳥取県の貝殻節はこの字余りの形である。
 さて、もう一度、最初の歌に戻って眺めてみよう。子供は模倣の名人である。この歌も本歌をヒントに、繰り返しを用いた詞章をつけたところ、いつの間にか元の意味などそっちのけで、「衣が木に掛かる」はずだったのが、「気にかかる菓子屋さん」というようになってしまったのである。
 子供の世界にあっては、柳田のいうようななまめかしく深遠な掛詞の意味など、まったく無縁であろう。それよりも彼らにとっては菓子の方がよほど重要な問題だったのである。大人の歌が子供の世界に移されてしまうと、アレンジの達人でもある彼らは、たちまちこのような詞章に変えて、遊びを楽しんでいたのであった。


 
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